浅間山周辺地質調査見学

浅間山はいつ頃できたのか、更に古いと言われる黒斑火山とその後の山体崩壊、浅間山東側にあった仏岩火山の様子など興味は尽きませんが、日本大学で火山地質学の教鞭を執られる安井真也博士が浅間山周辺の地層調査を進めています。

先日この地層調査の現場見学の機会がありましたのでその様子をご報告いたします。

現在、安井先生は浅間山及びそれよりも古い黒斑火山や仏岩火山などがいつの時代にどのような噴火をし、その噴火により引き起こされた溶岩流や火砕流の実態がどうであったかの調査を進めています。これを精確に調査することにより、将来浅間山周辺でどのような災害が起きうるかを予測することができるのです。

調査の方法は浅間山周辺の各所をショベルカーで地面を掘り(概ね5m程度の深さ)、その地層断面を調べることにより発掘場所ごとの溶岩流、火砕流、降灰の量などを特定していくというものです。これまでに浅間山周辺の20か所で調査が行われてきました。今回見学したのは1000m林道から少し上がった御代田町の長坂です。

調査のために掘り下げた調査穴とその結果を解説中の安井先生
調査穴の様子。黄色い矢印の白っぽい土は3万年前、鹿児島にあった姶良(アイラ)火山噴火による降灰が降り積もったATと呼ばれる年代測定マーカー地層、AT層の上にはBPと呼ばれる褐色軽石層や黒斑火山の山体崩壊による岩屑雪崩層が見えています

今回の調査では3万年前の地層であるATが確認されたことでその後どの年代にどのような火山活動があったのかを特定する成果が得られたとのことです。

当日の調査穴断面の解説図

なお、3万年前の地層であるAT層は白っぽく見えますが、これは姶良火山による溶岩噴出物が大気中で急激に冷えてできた細かなガラス質が光を反射するためです。この姶良火山の降灰層はなんと青森でも確認できるほど大規模なものなのだそうです。そのためこの地層が見つかれば3万年前の年代特定が可能となる地質学における拠り所の一つとのことでした。

上の顕微鏡写真は洗い出されたAT層の砂を顕微鏡で100倍に拡大したもの。下の写真は400倍に拡大したもの。写真は共に安井先生が提供してくださったものです。この透明のガラスの欠片が光って見えるのですね。
調査スタッフと見学者の記念写真 2020年10月31日撮影

秋の好天の中、大変に有意義で興味深い調査を見学できました。ちなみに右から3人目の安井先生はNHKのブラタモリにも出演され、タモリさんに浅間山噴火について案内・解説されておられます。

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