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ダーウィンが来た!放送決定

昨年11月にNHKの「ダーウィンが来た!」撮影隊一行が火山館を拠点として湯の平のカモシカの生態を取材・撮影しましたが、この取材に基づく番組が次の予定で放映されることになりました。

  日時 5月19日(日) 19時30分~19時59分

  放送局 NHK総合チャンネル

  番組タイトル ダーウィンが来た! 「高山に異変!カモシカ大調査」

皆さん、お見逃しなく‼

火山館館長交代

2024年3月30日付信濃毎日新聞にも掲載されましたように、長年火山館の館長を務められた神田恵介さんが3月31日付けで退任され、4月1日より小林正人さんが新館長に就任されます。

神田館長(左)と小林新館長(右)

神田さんは本日付で山を降りられ、今後は御代田町の自宅から火山館をサポートしていただくことになります。20年以上の長きに渡り、火山館を維持・管理しつつ登山者の安全をサポートされてきた神田さん、本当にお疲れさまでした。そしてこれから新館長に就任される小林さん、どうぞ健康に留意されつつ神田さんが築いてこられた火山館の役割を担っていただくこと、宜しくお願い致します。

次に、昨日(3月30日)に栁田さん、土屋さん、森泉さんの3名で火山館を訪れた際のリポートが届きましたのでご紹介します。

以下、栁田さんのレポート:

3月中旬から積雪が続き、また気温の上昇も大きく、ややハードな部分もありましたが、快適なそして、カモシカも我々を迎えてくれ、素晴らしい光景にも恵まれました。新館長の小林さんも、皆さんをお待ちしております。

火山館周辺の積雪は70㌢から1mくらい、登山道の状況ですが、ここ数日は、二の鳥居から上部はややハード(雪が柔らかく靴が潜ってしまう)状況ですが、来週以降は快適に歩ける状況です。皆さんぜひお出かけください。

2024年度浅間山クラブ総会

2024年度の浅間山クラブ総会が2024年3月9日(土)に小諸ユースホステルにて開かれました。

総会は栁田事務局長の司会進行により進められ、宮下会長挨拶に続きいくつかの活動報告、協議事項、2024年及び2025年の活動計画、予算審議等が行われました。審議の結果役員改選が行われ、長く会長を務められた宮下会長に代わり、栁田住吉さんが新会長と決まりました。宮下会長、お疲れさまでした。そして栁田新会長、これからよろしくお願いいたします。

栁田新会長

また、1999年から20年以上の長きに亘り火山館に携わられ、この3月末に火山館館長を退任される神田恵介さんの退任式が行われました。神田さんは今後は中里晶子さんと共に新副会長として浅間山クラブを支えてくださる予定です。

宮下会長から神田館長への記念品の贈呈

神田さん、長きに亘り火山館館長をお努め下さり、有難うございました。

4月からの火山館新館長は小林正人さんが就任されます。小林さん、宜しくお願い致します。浅間山クラブ一同で小林新館長をサポートしてまいりましょう。

小林新館長

会員からの報告事項として新規会員になられた永井さんから、「湯の平における日本鹿問題」に関する調査活動の報告がありました。この活動は浅間山クラブ会員でもある「NPO法人あーすわーむ」の福江さんが中心となり進められている活動であり、「日本山岳遺産基金」に認定されたそうです。湯の平にはユキワリソウをはじめとする多くの高山植物が分布していますが、最近急激に数を増やしている日本鹿により深刻な被害が生じているようです。

永井新会員による報告

総会終了後の集合写真

火山館周辺の様子

事務局長の栁田会員より火山館訪問レポートが届きました。

昨日(18日)火山館に出かけ湯の平を散策してきました。雪は極端に少なく登山道にはわずか残っている程度です。火山館で20㌢、湯の平樹林帯30-40㌢程度で気軽に散策できます。火山規制の影響もあるか?訪れる登山者も少なく、神田さん、小林さん、皆さんが来てくれるのをお待ちしています。カモシカの足跡をたどり雪面を散策するのもとても楽しいです。ぜひ皆さんお出かけください。火山館でお待ちしています。

昨日(1月19日)までは雪も少なく歩きやすそうですが、20日から21日にかけて大雪予報が出ています。火山館周辺はかなりの積雪が予想されますのでお出かけの方は十分な雪対策の準備をお願いいたします。

トレンチ堀削調査・小諸八満

浅間山火山研究の日本大学文理学部地球科学科教授の安井真也先生(火山地質学)が進めておられるトレンチ堀削調査の本年第2回目(通算29回目)が小諸市八満の民家が点在する山林にて8月27、28日に行われました。

小諸市八満のトレンチ

これまで28回のトレンチ堀削調査が行われましたが、29回目となる今回の調査は意外にも小諸市での初めての調査とのことです。

約5mの深さまで堀削された縦穴断面
2つの軽石流層の間に存在する黒色土壌

最上部の黒色土壌の下には仏岩火山噴火による小諸第2軽石流層とその下の小諸第1軽石流層とみられる共に1mを超える分厚い軽石流層が積み重なっており、それら2つの軽石流層の間には約5㎝の厚みの黒色土壌がありました。また第一軽石流層の下部には角が取れた数センチから数十センチの玉石が多数みられました。黒色土壌は炭素を含む成分が含まれているため炭素同位体年代測定を試みられるとのことです。

今回のトレンチ内にはここ小諸市八満からほど近い軽井沢町追分や御代田町を中心に広く分布する黒色の焼石(俗にいう浅間石)が多数含まれる追分火砕流層が存在していないこと、つまり浅間山の火山活動の影響がみられないことは大変意外に感じられました。

見学者に解説を行う安井教授

今後は軽井沢町発地にて第30回目となるトレンチ堀削調査が行われる予定とのことです。

トレンチ堀削調査・高峰高原

浅間山火山研究の日本大学文理学部地球科学科教授の安井真也先生(火山地質学)が進めておられるトレンチ堀削調査の本年第1回目(通算28回目)が高峰高原にて8月8日に行われました。当日高峰高原は快晴、下界は猛暑でしたが、標高2000m弱の現場には涼しく心地よい風が吹いていました。

トレンチ堀削の様子 上部は露頭部分、下部は堀削した縦穴、計8mの断面が露出
トレンチ内を調査する安井先生

安井先生によりますと、これまでのトレンチ調査の多かった浅間山の南東側に比べると浅間山の西側にあたる今回の高峰トレンチの最上部の黒土(黒色土壌)中には軽石や火山灰の降下火砕堆積物がみられないという大きな違いがあるとのこと。代わりにトレンチ内には1mを超える数々の岩塊とそれらをとりまく厚い土砂層がありました。今回堀削した縦穴の下方にどれほどの深さまで続く厚い土砂層なのか想像は膨らみます。こうした岩塊と土砂の厚い層がどうやって生成され、どこから来たものかは今後の研究の結果を待ちたいと思います。

トレンチ内にあった岩塊を割った断面サンプル、素人目にも様々な色の石の混在であることが分かります
ヤナギラン

トレンチ調査が行われた高峰高原では今を盛りとヤナギランが咲き誇っていました。

薪作り@湯の平

昨日までの梅雨が嘘のような快晴の中、恒例の火山館用薪作りを湯の平で行いました。今回は都合のつかないメンバーが多かったにも関わらず強力な助っ人の力も得て予定通りの薪作りができました。作業をされた皆さん、お疲れさまでした!

下界は30度近い猛暑となりましたが湯の平の気温は20度と涼しく気持ちの良い一日となりました。火山館周辺はこれから様々な花が咲き誇る短い夏を迎えます。皆さんのお越しをお待ちしています。

GW直前の火山館周辺状況

事務局長の栁田さんからレポートが届きました。

今日火山館に行ってきました。ゴールデンウイーク直前情報をお知らせします。

現在浅間山は2km規制がされていますが、とても穏やかな状況で湯の平周辺は静かな山歩きが楽しめます。神田館長も最近登ってくる人が少ないとのこと、ご都合がつく範囲でぜひ情報交換や芽吹きの山を楽しみにお出かけください。

今年は雪が少なく例年より1か月位早く雪解けが進み湯の平には全くと言ってよいほど雪はありません、外輪山も日陰にわずか残っている程度でした。

ユキワリソウやハクサンイチゲなども芽吹きはじめましたが、雪が少なく地面が寒気にさらされていた影響かも!全体に芽吹きは昨年より1-2週間ほど遅れているようですが、二ホンジカの食害が早くから懸念されます。

また、昨秋薪作りをした場所にボランティア依頼(薪の運搬)の看板が風で飛ばされたのか見当たりません。お出かけの際は周辺さがしてみていただければと思います。

湯の平の薪置き場ー看板が見当たりません

2023年度 浅間山クラブ総会報告

新型コロナにより2年間開催を見合わせていた浅間山クラブ総会でしたが、春の気配がただよう3月11日(土)に小諸ユースホステルにて20名の参加者により3年ぶりに開催されました。

大林副会長から総会開催の宣言
宮下会長から総会挨拶
栁田事務局長による議事進行

【報告&議事事項】

・2022年度活動報告/ ・2022年度会計報告/ ・2023年度活動計画/ ・2023年度会計予算 について報告と審議がなされて全員一致の賛成と承認がなされました。

【2023年活動計画は次の通りです。会員の皆様のご参加・ご協力をお願いいたします】

  ・火山館薪づくり&登山道安全確認(4月~5月)

  ・草すべりの登山道整備(草刈り&道整備 7月下旬) 

  ・フィールドワーク&水源整備(6月~7月)

  ・火山館薪づくり(10月~11月)

  ・情報交換会&火山館への荷揚げ(12月)

  ・鹿の食害等の観察、自然保護パトロール(通年)

総会後の撮影

総会に引き続き、浅間山火山研究の第一人者である日本大学文理学部教授(理学・火山地質学)の安井真矢先生による特別講演がありました。講演内容は浅間山の比較的近代における噴火とその研究者群とを時系列に対比・紹介されるというもので、これまで見聞きしたことのない新たな観点による新鮮かつ興味深いものでした。お忙しい中、浅間山クラブ総会に駆けつけてくださった安井先生に心より感謝申し上げます。

ご講演中の安井先生

火山館近況

栁田事務局長からのレポートです。

今日火山館に行ってきましたので現況をお知らせします。

立春以降最大の寒波で火山館でマイナス17℃、いったん解け始めた不動の滝も白く凍っていました。天狗の露地からの光景ちらちらする雪にかすんでいました。この寒さの中でも我がカモシカチームは観察・研究に余念がありません。敬服するばかりです。

ブラタモリ再放送のお知らせ

皆さんご存じのNHK番組の「ブラタモリ」の2019年10月5日に放送された「浅間山~江戸時代の大噴火!衝撃の1日に何があった?~」の再放送が決まりました。

再放送日程: 2月10日(金)午前0:30~午前1:15  NHK総合1チャンネル

この放送では1783年、約90日間にわたった「天明の噴火」に関する様々な謎が扱われます。タモリさんの案内役はこのホームページでも何度かご紹介してまいりました浅間山研究の第一人者である日本大学文理学部地球科学科教授の安井真也先生です。どうぞお見逃しなく。

2023新年の火山館

事務局長の栁田さんからの投稿です。

新年おめでとうございます。1月5日付の浅間山の景観を紹介します。雪も少なく気楽に歩けますので皆さんもお出かけください。登山道は火山館までは積雪10~30㎝位、火山館から上は40~50㎝程度で、トレースもしっかりついています(昨年は湯の平には1m近くありました)。踏み跡のない白銀の上を歩くのはとても楽しいですよ。

高田会員が日本哺乳類学会奨励賞受賞

湯の平でカモシカの研究を続けている高田会員が2022年度日本哺乳類学会の「奨励賞」を受賞されました。長年に渡り熱心に続けて来られたフィールドワークの成果がこうして認められたことは浅間山クラブとしても大変に喜ばしい気持ちです。高田さん、おめでとうございます!  高田さんの受賞コメントと選考報告をご覧ください。

受賞コメント

直接観察から迫る単独性有蹄類ニホンカモシカの生きざま

―社会進化プロセスの探求―

髙田隼人 (富士山科学研究所)

 ニホンカモシカは日本固有の原始的な森林性有蹄類であり、採食生態はブラウザーであること、単独性で同性に対する資源なわばりを持ち、一夫一妻制であることが知られる。視野を広げると、ほとんどの有蹄類が草原などの開放環境に適応し、グレイザーもしくは中間型の採食生態、群れ社会、複婚制の配偶システムを持つ中で、カモシカのような原始的森林性種は圧倒的な少数派である。では、なぜこの少数派の行動形質がカモシカで進化したのか?また、有蹄類における単独性から群れ社会、一夫一妻制から一夫多妻制への社会進化はどのような選択圧を受けて起きたのか?これらの疑問にアプローチするため、森林と高山草原に生息するカモシカを対象に個体識別に基づく長期直接観察を実施し、生息環境の違いに応じた行動の変異を探ってきた。その結果、森林では広葉樹を主食とするブラウザーであるのに対し、高山草原ではイネ科を主食としながら食物組成が季節的に大きく変動する中間型であること、森林ではメスが単独でなわばりを防衛するのに対し、高山草原では2-3頭のメスが行動圏を重ねてグループなわばりを形成すること、森林では一夫一妻制であるのに対し、高山草原では1オスが最大5メスを独占する一夫多妻であることを明らかにした。これらの成果により、有蹄類の祖先が森林から草原へ進出するに伴い、ブラウザーからグレイザー、単独性から群居性、一夫一妻制から一夫多妻制が進化したとする仮説を実証的なデータを基に支持することができた。草原における大量にまとまった食物の供給は採食競争の緩和を通じてメス群の形成を促進し、メスの集中分布はオスの一夫多妻化を促進したと推察された。

上記の研究は授賞理由の大きなウェイトを占める成果であるが、実際には他にも様々なテーマ、分類群を対象に研究をおこなってきた。例えば、カモシカでは対捕食者戦略・生息地選択・空間分布・シカとの種間関係、シカでは食性・生息地利用・群れ行動、はたまたテングコウモリではねぐら利用・食性・出巣行動などである。様々な研究を進める中で一貫してきたのは「純粋に野生動物の生きざまを観たい、そしてその適応的な側面を知りたい」というモチベーションと「とことんフィールドに入り込み、観察をおこなう」「観察からの気づきを定量化し、検証していく」というやや今どきではない泥臭い研究スタイルかと思う。また、日本での哺乳類の直接観察研究は最近ではやや低調傾向に思え、研究者によっては古臭いと思うかもしれないが、驚くほど多くの気づきや疑問を与えてくれる強力かつエキサイティングな手法だと感じる。今後も泥臭くフィールドでの観察を続け、カモシカを中心に様々な哺乳類の生きざまを行動生態学的な視点から紐解いていきたい。

選考報告

2022年度日本哺乳類学会奨励賞選考結果

奨励賞選考委員会委員長:横畑泰志

 日本哺乳類学会奨励賞規定に基づき,候補者の募集を行ったところ5名の応募がありました.日本哺乳類学会奨励賞選考委員会において選考を行い,その審査結果をもとに,金治 祐氏および高田隼人氏を2020年度の第20回奨励賞候補者として理事会に推薦します.

受賞候補者:金治 佑 氏

(省略)

受賞候補者:高田隼人 氏

 1991年生まれ.2018年3月,麻布大学大学院獣医学研究科動物応用科学専攻博士後期課程修了.同年麻布大学より博士(学術)の学位を授与.現在は山梨県富士山科学研究所研究部自然環境科研究員.日本哺乳類学会には2012年から会員となり,それ以来ほぼ毎年の年次大会においてポスター発表を中心に多くの発表を行ってきたほか,2017年以来哺乳類保護管理専門委員会カモシカ保護管理検討作業部会の一員を務めるなど,学会活動に貢献してきた.

 高田氏は,ニホンカモシカを主な対象に,個体識別,長期行動観察というオーソドックスな行動生態学的研究を精力的に続けてきた.その結果多くの成果が得られているが,最も重要な点として,従来研究されてきた森林に加えて高山草原という異なる生息環境での知見を積み重ね,後者では雌の群れ形成が促進され,雄との間で一夫多妻性の配偶システムが生じるという,従来のニホンカモシカ像を大きく覆す発見を行っている.さらにその知見に基づいて,偶蹄類の森林から草原への進出に伴う食性や社会構造の変化に関する従来の仮説を,実際のデータに基づいて支持することができた.また,有蹄類のみならず,単独性コウモリ類の行動生態にも持続的に取り組み,ねぐら利用や出巣行動,採食生態などに関する様々な成果を積み重ねている.

 これらの研究成果は,25編の原著論文などとして,数多くが公表されている.今後は国際学会での発表や,国際的に評価の高い雑誌により多く投稿し,国外での評価をさらに高められること,保全や管理のような応用分野にも,より直接的にアピールするような発展が期待される.これまでの業績とその将来性は,日本哺乳類学会奨励賞の受賞にふさわしいものである.

 なお,今回選に漏れた3名の応募者も非常に数多くの成果を上げ,あるいは卓越した内容の研究をされており,いずれもこれからの国内外の哺乳類学の研究を指導的な立場で支えていただける方々のようであった.今後とも優れた業績を重ねられ,奨励賞に応募されることを期待している.

安井教授 火山講座

鬼押し出しから見る浅間山

本HPでも何度かご紹介してまいりました日本大学文理学部の安井教授(理学・火山地質学)から有益な火山講座情報をいただきましたのでお知らせいたします。

この火山講座はNPO法人浅間山麓国際自然学校の理事に就任された安井教授が同学のインタープリター向けに火山講座として開設されたものです。インタープリターならば知っているべき浅間山をはじめとする火山の成り立ちやその性質について網羅的に学習できる素晴らしい内容となっています。これはインタープリターのみならず、浅間山を愛する本クラブメンバーにとっても大変有益な講座であることは言うまでもありません。

本講座はインタープリター向けとなっており一般公開はされておりませんが、安井教授のご厚意で浅間山クラブメンバー限定で受講可能としていただきました。それぞれ20分程度のyoutube動画となっておりますのでPCやタブレット、スマートフォン等で視聴できます。

浅間山クラブメンバーでご興味のある方は下記本HP管理人までメールをお送りください。折り返し火山講座視聴リンクをお送りいたします。

HP管理人メールアドレス: asama.ideno@gmail.com

薪つくり作業、お疲れ様でした

恒例の火山館用薪つくり作業を6月4日快晴の下、二の鳥居上部で行いました。

二の鳥居付近は眩しいほどの新緑。作業に適した涼しい気温の中、朝9時30分に作業はスタート、登山道下の倒木カラマツの玉切、登山道への運搬、薪割、登山道脇への薪積、と参加11名が役割分担して作業を進めました。今回は道下から玉切された薪材を持ち上げるという作業がことのほか重労働でしたが、なんとか2時過ぎには作業が終了し記念写真。ご協力いただいた浅間山クラブの皆さん、お疲れさまでした! 今年は二度目の薪つくりを10月に行う予定です。

積み上げた薪は登山者の皆さんのご厚意で火山館まで一つづつ持ち上げて頂いています。皆さん、宜しくお願いいたします。

写真は薪つくりをした二の鳥居付近から見える剣が峰西斜面の新緑の様子。剣が峰の短い夏がこれから始まり、秋には素晴らしい紅葉を見せてくれるはずです。

湯の平で見つかった新種きのこ

福江会員がカモシカの溜糞上に生えていたオレンジ色の「きのこのような物」を国立科学博物館の細谷剛氏に調査を依頼したところ新種の微小きのこであることがわかったそうです。以下、細谷氏ご自身による論文解説をご覧ください。今後カモシカ溜糞に遭遇した際にはこのきのこ、「シロシトネチャワンタケ」に出会えることを期待したいものです。

浅間山湯の平で見つかった日本新産の微小きのこByssonectria carlcinogenum

(シロシトネチャワンタケ)について

国立科学博物館 細矢 剛

2021年の春、福江佑子様より、おもしろいきのこの標本をいただきました。調査の結果、この菌を日本新産(日本では初めての報告となる)のByssonectria carlcinogenum(ビソネクトリア・カルキノゲヌム)と同定し(Hosoya 2022)、新和名としてシロシトネチャワンタケと命名したので、この菌の特徴を報告します。

 本菌は、カモシカの溜糞上に多数集合して発生したもので、カロテノイド色素を含んだオレンジ色で円盤状の小さなきのこ(子嚢盤)を形成します。しかし、子嚢盤の下には、白い菌糸がびっしりと広がっており、これは糞から容易に剥がれます。この白色の菌糸は比較的細胞壁が厚く、所々で膨らみながら、直角に曲がる菌糸から構成されています(子実体形成菌糸層)。子嚢盤の上部には胞子を含んだ袋(子嚢)と糸状の構造(側糸)がびっしりと並んでいます。微小形態を観察した結果、本菌を、チャワンタケ目ピロネマキン科のByssonectria carlcinogenumと同定しました。この科の子嚢盤はカロテノイド色素を含んでいるため、オレンジ色にみえるのです。本菌は、白い菌糸がふとん(しとね)のように広がることから、シロシトネチャワンタケと命名しました。

A, カモシカ糞上のきのこと子実体形成菌糸層(伊藤健彦氏提供).B–D, きのこ(子嚢盤)とE,断面. F,子嚢盤の断面. G-H, 子実体形成菌糸層の菌糸. I,子嚢と側糸. J,子嚢基部. K, 子嚢の拡大.L, 側糸の拡大.M, 子嚢盤を構成する細胞の拡大.N,子嚢胞子. Bars: B-F, 1 mm. G-H, J-N, 10 mm. I, 20 mm.

Hosoya T. 2022. Hosoya T. 2022. Enumeration of remarkable Japanese discomycetes (12): Notes on two fungi of Pezizales, Byssonectria carlcinogenum new to Japan and Phylloscypha phyllogena. Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B, 48: 39–45.

浅間鳥獣保護区更新

福江会員より、環境省は「令和3年11月1日付で浅間鳥獣保護区を更新し湯の平が特別保護区になった」との連絡がありました。

今回の指定は福江会員の職場「あーすわーむ」や下野会員も関与してなされたそうです。指定書には浅間山の植生や哺乳動物、地質等が詳細に記載されていますので浅間山をより深く理解するための参考資料としてご活用ください。

国指定浅間鳥獣保護区計画書

http://chubu.env.go.jp/shinetsu/asama_R31101.pdf

国指定浅間鳥獣保護区浅間特別保護地区計画書

http://chubu.env.go.jp/shinetsu/asama_R31101-t.pdf

上信越高原国立公園における指定植物リスト(案)指定する総植物種(656種)

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000233188

4月の火山館

事務局長の栁田さんから最新レポートが届きました。

4月5日現在の火山館周辺情報をお知らせします。昨日の雨は火山館周辺では50-60㌢の積雪でした。今年は雪解けが遅れそうですね!午後2時現在火山館前の広場で140㌢ありましたが、暖かい日差しの中、足跡一つない新雪の中を歩くのはとても楽しいですよ!!

火山館の積雪 4月5日
剣ヶ峰
湯の平から見る浅間山

高田会員からのカモシカ報告

髙田 隼人 (富士山科学研究所)

日本各地で減少してきているニホンカモシカと二ホンジカの因果関係

カモシカは日本の山岳生態系を代表する我が国固有の大型草食獣で「生きた化石」と呼ばれるほど原始的で、ヤギ亜科の祖先種によく似た形態や生態を持つと考えられています。そのため学術的にとても貴重で、国の「特別天然記念物」として手厚く保護されてきました。しかし2000年以降、全国各地でカモシカの減少が報告されるようになりました。四国や九州、紀伊山地などは特に深刻で、国の定める「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されています。

カモシカの減少の要因として、ニホンジカ(以下、シカ)の爆発的増加や分布拡大の可能性が指摘されています。シカは繁殖力が高いので高密度になりやすく、採食圧や踏圧を通じて植物群落に大きな影響を与えます。例えば、シカが高密度になった地域では、下層植生の減退(下草がなくなる)、不嗜好性植物の増加(マルバダケブキなど)、や森林更新の阻害(次世代の若木が育たない)が起き、これらを通じて様々な動物の生活にも影響が出ると考えられます。シカの増加に伴って、カモシカの餌条件の悪化や、シカと直接出会うことによりストレスを感じている可能性がありますが、実際このようなことが起きているかどうかは調べられていません。

浅間山にはカモシカが古くから生息していて、昔から登山者に親しまれてきました。特に高標高域の草原は、多くのカモシカを観察できる魅力的な場所です。一方シカは2000年頃から生息が確認されはじめ年々個体数を増やしながら分布を拡大し2010年代には高標高域の草原にまで分布を拡大させました。私たちの研究チームはカモシカ平に生息するカモシカの行動や生態を明らかにするために、2014年から現在まで火山館を拠点に研究を進めています。カモシカ一頭一頭に名前を付けて、個体数や出産状況を毎年調べていますが、2014年から2019年にかけて個体数が徐々に減ってきてしまいました(2014年;31.1頭/㎢⇒2019:23.7頭/㎢)。同時に、調査開始時から年を追うごとにシカの目撃頻度が増加し、樹皮剥ぎや採食圧・踏圧の影響が顕著になってきました。そこで、シカの増加がカモシカに悪い影響を与えているかもしれないということで、2019年から2種の関係について本格的な調査を開始しました。

まず、外輪山(カモシカ平からJバンドまで)のシカの生息状況を探るために、全域での直接観察と糞塊調査(糞の数を調べる)を2019~2020年に実施しました。すると、カモシカ平に比べて北側(特に蛇骨からJバンド)の方がシカの個体数が多いことがわかりました。また、カモシカ平付近では多様な植物が花をさかせるのに対し、蛇骨岳の周辺は植物種が少なく単調で、シカが嫌うマルバダケブキやバイケイソウが多いことがわかりました。そこで、シカが多い蛇骨岳周辺とシカが少ないカモシカ平周辺で、カモシカの採食行動や警戒行動、栄養状態、生理ストレスに差があるかどうか調べるために行動観察と糞の分析による調査を2021年からおこなっています。まだ調査の最中ですが、この調査によってシカが増えることによるカモシカへの影響の詳細がわかるかもしれません。シカは悪者扱いされてしまいがちですが、日本の生態系の大切な一員でもあります。シカとカモシカを含めた他の動植物の関係を解明することにより、どのようにシカと向き合っていくべきかを考える材料になればと思っています。

お互いに見つめ合うカモシカとシカ、カモシカ平にて

安井教授の論文発表

これまでも本ホームページで何度か紹介した日本大学文理学部地球科学科教授 安井真也博士による論文「降下火砕堆積物層序に基づく浅間前掛火山の大規模噴火の高分解能履歴復元」が公開されました(下記リンクからダウンロードしてご覧ください)。

降下火砕堆積物層序に基づく浅間前掛火山の大規模噴火の高分解能履歴復元

本論文は浅間山周辺の21ヵ所でトレンチ掘削調査を行うことで浅間前掛山の現在に至る1万年間の活動を推察するというものです。この調査は2017年から昨年まで5年に亘り行われたもので、今後更に範囲を広げて継続されるそうです。本論文について安井先生から下記のコメントをいただいております。

この論文は活火山・浅間前掛山は1万年間何をしてきたか、という内容で、2000年前以降は天明のような大規模噴火が低頻度で発生(平均すると700年に1回)、それ以前の縄文時代は、天明よりは規模の小さい、しかし軽石が降ってくるような噴火が長期間、断続していた(縄文人の見ていた景色は今とは違う)、といった描像が得られました。

私たち浅間山クラブのメンバーはもちろん、メンバー以外の皆さんにとってもこのシンボリックな存在である浅間山がいつごろからどのような活動(噴火)をしてきたのか、大いに興味深く気になる所です。今回の論文はそうした興味、疑問に対する解となっておりますので是非ご覧ください。

火山館から湯の平まで

事務局長の栁田さんから湯の平散策レポートが届きました。

昨日(2022年2月12日)火山館から湯の平湿原に行ってきました。快晴の穏やかな天気で無垢な雪の上を楽しく歩くことができました。積雪は火山館で120㌢、湯の平で150-180㌢程度ですが、登山道はしっかりトレースがあり普通に歩くことができます。また、湯の平はスノーシューズ利用でカモシカやウサギの足跡しかない雪原を楽しく歩くことができます。カモシカ平では3頭顔を出してくれました。(写真の横切っているのはカモシカの足跡)神田館長も最近だいぶ暖かくなって春が近づいているねと!

会員の皆さん、密のない湯の平の雪原、皆さんをお待ちしていますのでお出かけください。

湯の平雪原
カモシカ平から望む浅間山
カモシカ3頭が顔を見せた ~ カモシカ平

火山館近況

新年明けましておめでとうございます。本年も浅間山クラブの各種活動へのご協力を宜しくお願い申し上げます。

さて、事務局長の栁田さんから新年第一号の報告が届きましたので以下の通り掲載いたします。

「本日(1月5日)火山館に行ってきました。昨年末から寒波があり火山館では5~6年ぶりに冬らしい雪景色の新年を迎えました。1日の朝は-18°になったとのこと。登山道の状況ですが、積雪は二の鳥居付近で10~20㎝、長坂上部からカモシカ平付近で40~50㎝、火山館で1mです。コースはしっかりトレースがあるので2時間+αで行くことができます。長坂から上部はスノーシューズがあったほうが、雪山そしてカモシカとの出会いなどを楽しむことができベターです。久しぶりの冬らしい雪山、火山館周辺で楽しむことができますよ。」

カモシカ平付近
火山館前
火山館上部より牙山
湯の平分岐

浅間山周辺地質調査見学2021

昨年もご紹介しましたが、11月28日に日本大学文理学部の安井真也教授が進めておられる浅間山周辺の地質調査の見学の機会がありましたのでリポートいたします。

この調査は浅間山周辺の各所を数メートルの深さまで縦穴を掘り地層を観察することで過去の火山活動の様子を観察、推測するという手法で行われています。今回はその24個ヵ所目の調査ということで軽井沢町長倉の太郎山下部のからまつ林で行われました。

掘られた縦穴に入り地層調査を進める安井教授
地層断面の様子・色の違ういくつもの層が見えます

安井先生によりますと、水が溜まっている最下部は約25000年前の黒斑火山崩壊により生じた岩屑なだれによる堆積層であろうとのことです。この堆積層には直径1mを超える大石も沢山含まれており、この岩屑なだれの規模の大きさに思いをはせることになりました。これまでの調査に基づいて近く論文がまとめられる予定とのことですので詳細についてはそれを待ちたいと思います。

これまでの調査の概要を説明される安井教授(左)

これまでにも何ヵ所もの調査現場の見学をしてまいりましたが、場所により地層の状態は全くことなることを目の当たりにし、こうした調査の有用性と意義深さを実感しています。今後も調査は進められるそうですので、近い将来には浅間山の火山活動の経緯と今後について相当なレベルまで明らかになるであろうことが期待されます。

梅雨の晴れ間、静かな浅間山へ

事務局長の栁田さんから浅間山周辺の最新情報が届きました(以下、栁田さんの投稿)。

今日(6月15日)、火山館から湯の平に行ってきました。草花が咲きだし夏も間近いといった感じでした。出会ったのは2人とカモシカの親子のみ、のんびり自然を楽しむことができました。会員の皆さんもぜひ静かで自然豊かな浅間山にお出かけください。途中撮影した写真をご覧ください。

長坂上のレンゲツツジ(今年は花がきれいでした)
カモシカ観察点からの浅間山
満開のユキワリソウ
可憐なササバギンラン

他にもキバナノコマノツメ、イワカガミ、 マイヅルソウ、ミツバオウレン等もたくさん咲いておりましたが火山館裏のオノエランは鹿による踏み荒らしが原因で芽が出てきません。日本鹿がたいへん増えてしまい花の被害が大きく危惧しています。

今年最初の薪つくり作業

恒例となりました火山館で使用する薪つくり作業を二の鳥居付近で実施しました。相変わらずのコロナと昨日の大雨にも関わらずこの日は晴天に恵まれて予定通り実施できました。二の鳥居付近の空気はまだ肌寒いですが、まもなく芽吹きが始まる雰囲気が感じられました。登山される方は一本で結構ですので登山道脇に積まれた薪を火山館にお届けくだされば有難いです。

皆さん、お疲れさまでした。

薪つくり作業を行った二の鳥居付近では剣が峰の西側の山肌に自生するダケカンバ群を観ることができます。このダケカンバ、芽吹きはまだまだですが、枝の先端は芽吹きに備えて微妙に赤くなり始めていました。

新雪の湯の平

栁田事務局長が3月15日に火山館、そして湯の平を訪れたレポートと写真を寄せてくれました。柳田さんによりますと、二の鳥居まではほぼ雪は無し、長坂から上部は湿雪が20㎝~50㎝程度とのことです。スノーシューズを履いての湯の平散策は大変に気持ちが良かったそうです。カモシカも待っているので皆さん是非お出かけくださいとのこと。

登山規制解除!

今朝の浅間山、噴煙は見えませんね

2021年2月5日、気象庁は浅間山の噴火警戒レベルを1に引き下げました。これによりこれまで規制されていた前掛山山頂への登山が可能となりました。浅間山クラブのメンバーにとっても一般の登山者にとっても嬉しいニュースです。

ただし、小規模な噴火は常に起こりえますので留意が必要です。また、現在の積雪は多めのようですので冬季登山に対する十分な準備をお願いします。